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『あたしとひぐっちゃん』 サクライ マサミ
自称・探偵の樋口丈一は四十歳。最近繰り返し夢に見る高校時代のある日は、思い続けた鏡子に振られた日らしいが、肝心の彼女の台詞が暗号のようで思い出せない。
丈一の弟が鏡子と結婚して生まれた娘のみずきは今小学六年生。数年前に死んだ父親の兄である丈一と仲良しだ。みずきは母親の交際相手の多摩川になじめず、再婚話にいらだっている。多摩川とみずきを慣れさせようと丈一は小細工をめぐらせる。みずきの担任の氷室先生は離婚した妻と暮らす娘のゆきを連れて失踪した。丈一とみずき、多摩川が二人を見つけ、ゆきを無事帰すが、かたくなな態度の元妻の心をほぐし、これからもゆきが父親の氷室先生と会えるように丈一はお節介焼きの本領を発揮して奮闘する。
選評
元気な女の子と、その父でもなく兄でもない微妙な立場の独身伯父さんのコンビが活躍する、あたたかい物語。
初恋の人である鏡子の容姿と亡き弟丈二の口調を受け継いだみずきに向ける丈一の情は、保護者・友達・恋人のいずれでもあるようなないような、曖昧なものである。再婚を控えた鏡子は頼りになる母親で、その交際相手の多摩川もみずきを守る。大人たちに守られて元気で大胆な女の子でいられるみずきに、人の心の闇も教えるのは丈一の役目だった。丈一の献身はあまり報われていないが、ラストシーンも登場人物の誰に対しても祝福を贈りたくなるような明るいもので、その前の緊迫感あふれた会話の効果を高めている。
生き生きとした会話に、登場人物の姿が鮮やかに想像させられ、夢中になって読んでしまう大変に楽しい作品だった。