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『硝子のラビリンス 』 村田 真奈美
拓海が開く喫茶店に、ある朝、女子高生の彩加が訪れる。その日から、ふたりは学校が始まる前のひとときを一緒に過ごすようになる。毎朝、コーヒーを飲みながら、彩加と話すうちに、拓海はだんだんと危うい魅力をたたえた彼女に興味を抱くようになる。
物静かで、学校でも友達が少ない彩加だったが、ひとりだけ心を許している同級生がいた。快活でボーイッシュな沙希だ。お互い、理解しあい、認め合う仲だっ たが、ある日、彩加は拓海に「喧嘩しちゃった」と告げ、体調を崩してしまう。倒れた沙希に付き添って病院に行った拓海は、彩加が隠していた過去と秘密を 知ってしまうのだった……。
選評
最初は、「悲しい過去を持った少女が、兄みたいな頼れる存在の男性と結ばれるまでを描いた話だろう」くらいに思っていた。けれど、違った。ずいぶんと大胆 に期待を裏切ってくれた。いい意味で。恋愛って本当に十人十色で、いろんなパターンがあって、理解できるものからできないものまで、さまざまだ。だから、 恋愛小説にも古今東西いろんなテーマが描かれている。もう出尽くしただろうってくらいに。だけど、今作はちょっと新しいな、と思った。新鮮だった。じつは 気付かないだけで、自分の身の回りにも、こういう恋愛をしている人が大勢いるのかもしれないな、と思えたのだ。
傷つきやすい危うい思春期の少女たち。そして、生まれて初めて誰かのことを愛しいと思えた男……。すれ違い、交わらないトライアングルの恋が、歯がゆく、切ない。
著者は、美しく静謐な文章を紡ぐ人だと思う。そのトーンがブレることなく、ラストまで続いているのが素晴らしい。高い筆力の持ち主だと評価したい。