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『永遠のボーイフレンド 』 刃奈上 拾
さえと父の穏やかな日々に転機が訪れたのは、キャリア・ウーマンの母が仕事を辞めて家にいるようになってから。それまで夫婦といいつつ、あまり接点のなかった両親が次第に心を通わせていく様を見守りながら、さえは父親への密かな恋心をもてあます。(第一話「ファミリー・ロマンス・プラス・ラブ」)
いじわるを言っても最後はいつも優しいジュンは、あるときはナンパ相手、あるときは同僚、またあるときは前世の心中相手――引きこもりのなおの脳内彼氏である。そんな彼女を心配した母親から強引に見合いを薦められるが……(第二話「かたちなき君を想う」)
軽度の知的障害をもつ慶太は、養護施設「みらい荘」で、同年代の指導員・和弥や、その後輩の女性指導員・篠宮と出会い、生まれて初めて友情を築く。やがて篠宮のことが頭から離れなくなったことを自覚した矢先、和弥と篠宮が付き合っていると知らされる。(第三話「はつこい」)
“叶わぬ恋”をテーマにしたオムニバス短篇集。
選評
それぞれにコミュニケーション不全(旬のモチーフ!)の傾向がある主人公たちが、恋を通して成長し、新たな関係を築いていく様は、ギスギスしたリアルではなくて、優しいナチュラルさを感じさせる。主人公と周囲の人々との関係を短いなかに丹念に描いており、癖のない瑞々しい文章と、未来への余韻を残す内容が相まって、“叶わぬ恋”というテーマにもかかわらず爽やかな読後感である。二話目の、なおが次々と妄想を繰り広げる様子などは非常にユーモラスで、全体を通して少し三浦しをんを髣髴させた。第三話は、知的障害のある青年が主役ということで、難しいテーマに挑戦しているなと思ったが、意外にさらりと書いていて感心した。でもやはり、少し背伸びして書いている感はある。漢字や仮名遣いに気遣っているのが感じられたが、がんばっている分、仮名に直し残した部分が気になった。