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『風鈴街』 中山 閑賀
風鈴街と呼ばれる桃源郷に住むまりも、まりもの恋人・友人・知人達を巡る幻想物語。まりもが住むアパートの管理人・ほっちゃんは街中の人々から慕われ、頼 られている、兄貴や親のような存在であった。そこへ一人の他所者・ヒカルが現れる。まりもとヒカルはお互いに惹かれ合い共に生活するようになるが、ヒカル は風鈴街での生活を楽しみながらも、街全体への疑問や恋人・まりもへの様々な疑問を抱くようになる。やがて、まりもとヒカルは外の世界に行く決心をする。 だが、それを快く思わない者がいた。それは風鈴街を意のままに操るほっちゃんであった。まりもを心底大切に思うほっちゃんは、まりもを守るためにとある計 画を企てるのであった。
選評
独特な感性と表現力を持った力強い作品。舞台となる風鈴街そのものが奇妙なおとぎ話のような世界で、そこで繰り広げられる奇怪な事件は、読み手に夢の中をさまよっているかのような感覚を与える。
物語は「記憶の一部を失った」主人公・まりもの視点から語られており、ともすると読み手を混乱させるようなストーリー展開が一部見られるが、それも終盤へ 向けて一つ一つの謎が解かれていくうちにすべての出来事やキーワードが明確な繋がりを持つことが明かされ、風鈴街の存在感を増す。
まりもを囲む風鈴街の人々も個性豊かに描かれておりキャラクターが一人一人際立っている。グロテスクな描写も多いが、古い子守唄や童話の原型を読んでいるかのようなプリミティブな力を感じさせる一面がある。