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『太陽と向日葵』 あんな
中学時代から不特定多数の男性たちと、いわゆる「セックスフレンド」の関係を続けてきた高校1年生の葵。父親との会話は少ないが、家族との関係も良好、学校にも通っている、いたって普通の子。「ただ、何となく寂しいから」。そんな理由で男たちに抱かれては、寂しさを紛らせているのだ。 そんなある日、背が高く、太陽みたいな笑顔をたたえた高3の陽と出会う。いつも明るいオーラを放ち、葵のことを「素敵な笑顔の持ち主だ」と褒めてくれる陽。そんな彼に惹かれた葵は、彼に似合う自分になるために自堕落な生活を改める。そして思い切って思いを告げた。が、彼は首を立てに振らなかった。 卒業式の間際、葵は陽から手紙と手作りのお守りを渡される。手紙には、「君ならもっと素敵な人と出会えるよ」と彼の人柄が表れた誠実で優しい言葉が並んでいた。葵は泣く。たとえ結ばれなくても、心から好きだといえる人に出会えたことは葵にとって幸せだった。 2年後、沖縄の大学へ進学した葵のもとに、陽がバイクで事故死したという報せが入る。まだ彼を思い続けていた葵は愕然とする。そして通夜の席で、2年前に手渡されたお守りのなかから、彼の本当の思いが綴られた「もう1枚の手紙」を発見するのだった……。
選評
携帯メールを織り交ぜ、物語を構成しているところが“携帯小説世代”といえる19歳らしいな、と思った。ゆえに、どこかで読んだことがある感は少々、否めない。が、読み進むうちに、そこはかとないパワーを感じ、ぐいぐい物語に引き寄せられた。不特定多数の男たちとのセックスに溺れていた女子高生が、心から好きな人ができた瞬間、清らかな少女へと変身を遂げる。が、彼への思いは通じず、友達のまま。それでも、愛する人がいればただただ幸せ――。誰かを強く思ったことのある人ならば、そのあたりには深く共感できるのではないだろうか。 ただし、陽が卒業し、葵が進学のために沖縄に行くまでの約2年間、葵がどんな感情を抱いていたのか、その心理描写が足りない。「受験を機会に誰ともつきあったりしてなかった」という表現のみでは、陽を大事な人だと思い続けていることが切実に伝わってこないのだ。せっかく前半でメールを活用したのならば、「会いたいよ」「声が聞きたいよ」「いま何してるかな?」など、送れないメールがどんどんたまっていく……。というように、葵の切ない気持ちをもっと表現していれば、陽が死んだときの、葵の喪失感にもっとリアリティが出たのではないだろうか。 稚拙な表現も多いし、結びも私小説にありがちな「手記風」になっているのは気になる。が、著者の「誰かを思う力が自分を変えるんだ」というメッセージは、読む者にも充分伝わると思うし、何より「恋愛ってすばらしい」と思わせてくれた。そういう意味ではインパクトのある恋愛小説だと評価したい。