第9回受賞作品詳細

大賞 『トマトのために』/著者:石田祥(応募時筆名:鰯田祥)

主人公の早苗は、祖母の代わりに家賃の受け取りに行ったボロアパートの一室で風変わりな男に出会う。裏庭でトマトを栽培する大学農学部の講師、日置だ。食べさせてもらった裏庭のトマトはあまりに甘くておいしかった。衝撃が早苗の体を突き抜け、熱に浮かされるように日置と寝てしまう。日置は、早苗にある依頼をする。100万円のバイト代を払うので、中西教授夫妻宅での一カ月住み込み生活に付き合ってほしいというのだ。しかも、偽の婚約者として。そこでの生活をうまくこなすことができれば、日置は引退する教授の後継者として認めてもらうことができるという。不仲な母親から逃れたい一心で承諾した早苗だったが、共同生活はさまざまなトラブルに見舞われる。果たしてふたりは、無事に一カ月を乗り切ることができるのか?一夏の奇妙な生活を爽やかに描いた、甘くて酸っぱいトマトのようなラブコメディ。


 
著者:石田祥(応募時筆名:鰯田祥)

1975年、京都府生まれ。京都府在住。高校卒業後、金融会社に入社。その後、何度か転職を経て、現在は通信会社勤務の傍ら執筆活動中。

 受賞コメント

このたびは大賞という栄誉に預かり、心より嬉しく感じております。子供の頃から漠然と物書きになりたいと思ってきました。大人になり何度か職が変わっても、やはり物を書く人になりたいという夢は変わることなく、それならば本気でやってみようと思い立ったのが三年前です。もっと若い時から文学の勉強をすればよかったと思わなくもありません。ですが今までの経験があったからこそ、今回このような大きな賞を頂けたのだと実感しております。何歳になっても夢は持ち続けるべきだと、たとえそれが叶わなくても夢があることは幸せなのだと、我が身をもって知りました。これからも一生、物を書く人でいたいと思います。そして私の書いたものが誰かの読みたいものであるような、そんな小説を書けるように邁進していきます。本当に有難うございました。